インターネット「ぴゅう太郎」

 「いつか何処かで」

 18 東京の空

 

南町田のグランドにはHB彗星観望のために人が集まっていました。HBとは彗星を発見したヘール・ボッブ両氏の略記です。1995年に発見されたこの彗星は1997年4月ごろ太陽に最も接近しその姿は今世紀最大の帚星になると予想されています。
グランドには多くの天体望遠鏡がHB彗星が輝くへびつかい座の方角を向けて、雲がはれるのは今か今かと待っています。
へびつかい座は最近の本によると13番目の星占いの黄道星座としてさそり座といて座の間に割り込んできました。
しかし、雲の空を割り込むのは地球表面を飛び交う航空機の点灯だけです。なかなかHB彗星は現れません。
 東京渋谷にある五島プラネタリウムの館長から、スライドを使って彗星の説明をしていただきました。1986年、76年ぶりに姿を現せたハレー彗星は、ピーナッツの形をした氷と塵の塊でした。そして、その塊から太陽風に吹かれて一直線に電離ガス(PLASMA)が伸び、塵(DUST)でできた箒は光の圧力によって曲がるそうです。箒が曲って拡がるのは彗星の移動による軌跡と太陽風によると思っていたのですが、違うことがわかりました。
HB彗星は1997年春にはペルセウス座まで移動します。
 ペルセウスはエチオピア・ギリシア神話の英雄です。
ペガサス馬(ペガスス座)に乗ったペルセウスは、見た物を全て石に変えてしまうメデューサ退治の帰り道、鎖に繋がれて化けクジラ(クジラ座)に食べられそうになるアンドロメダ姫(アンドロメダ座)を助けました。アンドロメダ姫はケフェウス王(ケフェウス座)とカシオペア王妃(カシオペア座)の娘で海の神
ポセイドンの妖精たちより美しいと言った王妃の口が災いしたようですが、人生万事塞翁が馬、ペルセウスと結婚し幸せです。
幸せといえば、トロイの王子ガニメデも幸せいっぱいで水瓶座(アクエリアス)になっています。秘密の幸せ、王様の幸せ、幸せの中の幸せという幸せづくしの星々から成っているそうです。
地球から光に乗って月まで1,3秒(38万km)、太陽まで8,3分(1億5千万km)、冥王星まで6,5時間(70億km)、シリウスまで8,9年、北極星までは400年もかかります。
そして今、光るアンドロメダ銀河は230万年前の姿です。
光も追いつかないビッグバンの果て、天空の長城といわれるグレートウォールは十の二十六乗メートル彼方にあるそうです。
つまり宇宙の地平線は150億光年も彼方にあるのです。
想像もつかない天空が東京の空、目の前に拡がっているのです。
 このグランドに来る前に、五島プラネタリウムで流暢な解説を聞き、宇宙天空の予備知識はプラネタリウムの夜明けまで勉強し十分です。あとは、本当の星空を見るだけです。しかし、雲はいっこうに晴れません。今晩一番明るい木星さえみえません。
彗星は木星近くの微惑星群から、冥王星のさらに外輪にあるカイパーベルトから、あるいは太陽系の外環を大きく包む巨大なオールトの雲から不意に現れるとききました。まだ、東京の星空は雲で隠れています。しかし、コンピュータ制御された天体望遠鏡はさかんに動いていろいろな星座の位置を確認しています。
雲の向こうから未知の彗星が現れるのは間違いなさそうです。
ペルセウス座か獅子座か次はどこから現れるか、期待と不安の交わる気持ちで空をみていました。でもその日はとうとう現れず、
プラネタリウムで不意に買った星座傘をさしていました。


「いつか何処かで」