インターネット「ぴゅう太郎」

 「赤道の向こうに」

11. スキーヤーのユーモア


 日本の冬のスポーツといえば、スキーがまず最初に挙げられる。スキー道具を使ったスポーツとしてのスキーの歴史はおもったよりも新しく明治以後と訊く。札幌冬季オリンピックでは、特にジャンプ競技に強い印象が残っている。ジャンプ台の高さは見るものを圧倒し、そこから勢いよく風に乗って飛ぶ人間の姿にとても感動した。飛ぶことを滑っている途中で躊躇したら即ち死を意味する。命を掛けたスポーツである。

 オーストラリアで夏のスポーツといえばやはりスキーが挙げられる。山と海、雪上と水上という違いはあるものの、命を掛けたスポーツであることにまちがいない。私は水上スキーショーをみた後、感動してしばらく席を立てなかった。人間がモーターボートに強烈なテンションで引かれ、そのスピードの中で微妙なバランスを保っている。ちょっとした力の緩みも許されない。ジャンプ台から空中に飛ばされ死につながってしまう。見ている私の方も極めて緊張してしまった。しかし、サーカスのピエロ役の水上スキーヤーがいて、この人にはとてもクレージーなおもしろさがあって、私の極度の緊張感を深い感動に変えてしまった。日本では絶対に考えつかない脚本でショーが進行していた。
なにがどう違うのかうまく説明ができないが、根本的にユーモアの精神が違うように思えた。日本で雪山スキーショーがもしもいつか開催されるような時代になったとしたら、脚本家はぜひオーストラリア人にお願いすべきだと感じた。

 帰り道アメリカズカップの優勝艇をみた。アメリカ以外で優勝したことがある国はオーストラリアのみであった。誇りを持ってしかし意外に身近に飾られていた。日本も、外国人との混合ではあるが、このアメリカズカップに挑戦している。日本のボートの設備そして操作技術力ともかなり上達し凄いと訊く。競技中、自己主張し抗議することにも慣れてきた。しかし、これまで日本のおもしろいジョークは聞いたことがない。日本が他の国々に負けても勝ってもぜひユーモアのある発言を聞きたいものである。競技とは別にアメリカズカップがとても身近なものになるだろう。

 95年はニュージーランドが優勝した。日本が優勝すると、次のアメリカズカップはサンディエゴから蒲郡で行われる予定だった。蒲郡には家族で世界一周をしたヨットのエリカ艇が飾ってある。その家族のお嬢さんエリカちゃんはヨットの寄港地の学校に通った。寄港地の子供たちとの交流にエリカちゃんの笑顔は欠かせないという記事を覚えている。私もそう思うが、笑顔とユーモアとはまったく別なものである。笑顔は自分で作るものであり、ユーモアは相手が笑うものである。
私は、オーストラリアのスキーヤーのように相手の笑いを誘うようなユーモアを持ちたいと思うのだが、それには相当の時間と心の根本的改革を必要としそうである。


「赤道の向こうに」