インターネット「ぴゅう太郎」

 「赤道の向こうに」

7. 南十字星のゴッドファーザ


 昔から、「冬は星座」といわれている。
特に寒い夜は空が透き通りくっきりと美しく星座がみえる。南の空のオリオン座は天の赤道上にあるため、その三つ星は真東から出て真西に沈む。天上には黄道12宮の牡牛座、双子座、蟹座などが描かれている。そして北の空には北斗七星大熊座が北極星を指している。・・・
ところが私はオーストラリアでは夏の暑い夜にこの同じ星空を見ている。
北の空にオリオン座が見え、黄道12宮は地平線に近い。南の空はしらない星が素知らぬ顔で輝いている。これは当然のことなのだが、とても不思議でならない。日本であたりまえの星空がなく、オーストラリアではこれまで私はみたことがない別の星空があたりまえに輝いている。
理屈ではわかっているつもりが、実際にみるとわからなくなる。特に北斗七星と北極星が見えないのがとても不安である。

 かつて赤道を越えた船乗りたちは、磁石よりも正確に北を指す北極星を見失い、途方にくれたことだろう。そのかわり南半球の冬のある寒い星空に北半球よりもずっと明るく無数に輝く天の川を見たときはとても感嘆したことだと思う。
黄道12宮の蠍座、南斗六星いて座、山羊座などが天上に見える。そしてその輝く川の中に南極を指す十字星を発見したときはきっと神に祈りを捧げたに違いない。
北半球のほとんどの星座は古代から記録に残りプトレマイオスが命名している。一方南半球の星座のほとんどは18世紀になってからラカーユらが命名し、現在は全天88星座になっている。
しかし、このうち南十字星だけは命名者が不明である。南十字星にゴッドファーザ(名づけ親)は必要ないのである。
私が旅行していたとき、オーストラリアは夏だったので、オーストラリアの国旗に掲げられたその美しい天の川と南十字星をみることはできなかった。

 日本の国旗には太陽が掲げられている。
オリオン座はつづみ星、双子座は門松星、蠍座は鯛釣り星といったぐあいで、日本独特の星座名が昔にあった。そして太陽の通り道の黄道12宮はなく、それにかわって月の通り道の白道28宿が日本の古代陵からときどき発見されている。月の公転が27.3日から28宿が決められ、中国では300以上の星座があったらしい。同じように南半球にいた古代人はきっといろいろな星座を命名していたと思う。
現在、南半球の星座名には八分儀座、羅針盤座、コンパス座、望遠鏡座、顕微鏡座、など命名当時の文明器具のほかに、はと座、ふうちょう座、鳳凰座、きょし鳥座、孔雀座そしてカメレオン座など鳥獣の名を冠するものが多くある。
 
 南半球の古代人はきっと笑いカワセミ座やカンガルー座、エミュー座、コアラ座などを冠する星座をつくっていたに違いない。
そして、日本でも、オーストラリアでもおなじようにその星座にまつわるいくつもの逸話が長い夜中に同じ時刻に語られていたことだろう。
特に「冬は星座」と言う言葉は赤道を越えて共通する枕詞である。


「赤道の向こうに」