インターネット「ぴゅう太郎」

 「赤道の向こうに」

4. 天国の風呂


 ハワイは観光娯楽地として最高である。
ドルに交換しなくてもそのまま日本円が通用し、日本の味がそのまま異国で食べられる。また英会話が苦手の私には日本語が通じるのもありがたい。一方で日本人がやたら多いのがイヤというわがままな人も中にはいる。しかし、あの高層ホテルが群雄割拠し道を隔ててすぐ砂浜というのはとても魅力的である。ゴールドコーストはそのハワイとどこか似ているがどこかが違う。例えば、ゴールドコーストの砂浜は一直線に数キロ続き、波も比較的高い。人は少なく、遊泳者は許可された旗と旗の間にしかいない。朝早くには砂中のゴミを回収する大きなロータリー車が遠くからいずこともなく現れ、ハンドルをきることなく、通り過ぎ、遥かかなたに消えていく。水平線はたしかに円弧を描き、空は青く澄みきっている。ホテルのプールサイドには噴水の音と時々かすかに人の声が静寂の中に心地よく響き、一切の音楽は聞こえない。ここでは水の音こそ至上の音楽である。ここはまさに静かな天国なのである。

 さて、私はプールで泳ぎたくなったので着替え室を探した。しかし、そこには便所しか見あたらない。おかしいと思って聞き直すが、監視員は便所を指さす。便所の一角には確かにシャワー室があった。かくして鼻をつまみながら着替えをした。また外国のホテルはどこも風呂と便器はいっしょである。しかも風呂は浅い。石鹸泡風呂も悪くはないが、やはり深いお湯にどっぷりと浸かりたい。最近、日本のあちこちにクアハウスがたくさんできている。サウナ、薬湯、泡フロ、打たせ湯などよりどりみどりの風呂に入れる。
私は湯に浸かる前に身体をきれいに洗ってから入浴したいが、外国の風呂桶の外には排水口がないので洗えない。肩こりと腰の痛みにきく入浴剤を入れたり、冬至にはユズを、5月には菖蒲を浮かべたい。便器と一緒では、風呂でヒノキなどのよい香りを楽しむことが半減してしまう。また、便所で顔を洗ったり、歯を磨きたくない。

 オーストラリア人からみると逆に日本人はなぜ無用に熱い風呂に入りたがるのか、またなぜ裸で他人の入った同じ湯に平気で入るのか不思議かつ不潔な感じをもつだろう。かつて、オーストラリアでは白人しか入れないプールがあり、トイレがあった。最近では、日本人が白人と一緒のプールに入ってもいやな顔をされることはまずない。しかし風呂はどうだろう。オーストラリア人が日本人と一緒に裸で一緒に入っているところは見たことがない。言葉のギャップの他にも、不潔についての感受性の違いはどうしようもないのである。

 ただ、私は仕事について裸のつきあいは可能だと思う。ハワイでは現地にとけあって働く多くの日系人をみた。オーストラリアでは多くの日本人が働くのをみた。働く環境はハワイとはかなり違っている。日本人同士固まらずに、オーストラリア人と日本人がそれぞれの風習を乗り越えて裸で一緒にどんどん仕事をしてほしいと思う。
ハワイもゴールドコーストも私にとってはどちらも、日本式風呂を除けば、同じ天国なのである。


「赤道の向こうに」